2010年3月3日水曜日
かすやキッズネット2009年2月号
今回は「発熱」について普段考えている事を述べます。発熱は、多くは風邪(ウイルス感染が多い)によるものであり、数日の経過で軽快していく事が多いのですが、時に重篤な病気が潜んでいたり、合併してくることがあります。僕が発熱のお子さんを前にして考えることは、①早期に強い医療介入が必要な状態か?②今後の見通しはどうか?(見通しを立てるだけの時間的猶予はどれ位あるか?)の2点です。①②を推測していく上でのポイントは、年齢・病日・随伴症状であると考えます。まず年齢では、乳児では重症細菌感染症(化膿性髄膜炎など)が まれに潜んでいることがあります。特に3〜4ヶ月未満の乳児では注意深い観察・早い対応を必要とする場合もあるため、早目の医療機関の受診を勧めます。次に病日(病勢)ですが、通常かぜでは2〜3日の経過で解熱傾向を認めますが、改善がない場合には、重症化もしくは風邪以外の病気や合併の可能性も考えます。次に随伴症状(および全身状態)ですが、乳幼児では発疹・充血・指趾の紅潮などがあれば川崎病の可能性も考えます。発熱以外に鼻水・咳がなければ尿路感染の可能性も考えます。咳・喘鳴などの呼吸症状が強ければ、呼吸のサポートも検討します。鼻症状・耳症状があれば中耳炎の可能性も考えます。また熱の高さは必ずしも重症度とは一致せず、異常言動・意識状態の程度が脳炎・脳症の重要なサインとなります。以上を考えながら診察していき、経過の中で判断していきます。発熱は苦しいものであり、周囲の者にとってもつらいものです。しかし感染症で発熱するのは進化の過程で獲得した生物としての人間の生きる術と考えます。発熱のみにとらわれず、上記①を見逃さず、②をきちんとたてる診療をしていきたいと考えます。 ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ