2023年8月18日金曜日

かすやキッズネット9月号

 今月(第173号)は『経口 抗コロナウイルス薬』です。

                             

8月に入りコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきました。


今回は小児に適応のある 経口 抗コロナウイルス薬 がテーマです。


現在日本で小児に適応がある経口薬 (飲み薬は以下の2剤です。


【ゾコーバ】

日本の製薬会社が開発した昨年11月に緊急承認された薬剤です。

12歳以上の方が対象です。他の薬剤は重症化リスクがある方への

投薬という制約がありますが、本剤にはそういう制約がありま

せん。重症化抑制効果は不明とされており、薬剤効果は発熱等の

症状を1日程度短縮するといわれています。

発症初期(3日以内)の投薬開始が必要です。併用禁忌・注意薬が

多く、妊娠の可能性がある女性・妊婦への投薬も禁忌です。


私個人は小児、特に重症化リスクの低いお子さんの場合は

投薬は慎重に判断すべきと考えています。


【パキロビット】

小児では12歳以上かつ体重40kg以上の重症化リスクのある方

対象です。重症化リスクとは慢性呼吸器疾患・難治性喘息・重篤な

心疾患・腎疾患・神経筋疾患・血液免疫疾患などです。

重症化予防効果はかなり高いようです。ただ併用禁忌・注意薬が

多く、腎機能障害がある方への投薬も慎重に行います。


上記内容は8月上旬の情報を元に記載しました

かすやキッズネット8月号

今月(第172号)は『夏かぜウイルス』です。

                             

7月に入りました。

アデノウイルス・エンテロウイルスなど上気道症状が強い感染症、

RS・ヒトメタニューモウイルス・パラインフルエンザウイルス・(エンテロ)ライノウイルスなど

下気道症状が強い感染症、少数ではありますがコロナウイルス

感染症、など多様な感染症が続いています。


小児入院医療機関の病床も厳しい状況が続いているようです。


タイトルの『夏かぜウイルス』ですが

代表的なウイルスとしてアデノウイルス、エンテロ/ライノウイルスがあります。

どちらもエンベロープ(ウイルス外側の膜)を持たないためアルコール消毒の

効果が弱く、流水による物理的・強制的な排除が必要です


エンテロウイルス属 は ヒトエンテロウイルス(HEV)と ヒトライノウイルス(HRV)2つを

包含し、それぞれ100種以上の型が知られています。


ヘルパンギーナや手足口病のウイルスは

HEV-Aに属し、小児で下気道症状にも関わるライノウイルスは

HRV(-C) に属します。


診断は症状・所見・流行状況から推測し治療は対症療法です。

重症例では入院も検討します。


有効な抗ウイルス薬がなく、2次医療機関の病床も十分でない

状況では予防が大切です。アルコール消毒だけでなくこまめな

流水による手洗いや (可能であれば)うがい等による自衛の

意識が大切と考えます

 

かすやキッズネット7月号

 今月(第171号)は『熱中症』です。

                             

熱中症とは「暑い環境で身体が上手く適応できずに起きてしまう

状態を総称したもの」で、暑さに身体が慣れてない56月頃より

認めます。<労作性>と<非労作性>(日常生活での発症)2つが

あり、重症度はⅠ〜Ⅲ度に分類されます。


【Ⅰ度】「めまい、立ちくらみ、顔色蒼白、頭痛、手足のしびれ・

冷感・こわばり」等です。意識障害は認めず「きつがっているが、

呼びかけにはきちんと返答できる」というイメージです。

発汗による体液の喪失と暑環境下での末梢血管拡張作用による

脳血流の一時的な減少、それに関連する自律神経の障害と考えら

れます。涼しい環境で安静臥床(足を挙上)・ぬれタオル等による

クーリング・水分(経口補水液)を摂取をさせていけば改善して

いくケースが殆どです。ただ症状は時間とともに変化していきます。

症状が改善しなければ医療機関を受診してください。


Ⅱ度】Ⅰ度より重症化し、意識障害「ぼーっとして反応が鈍い」

が顕在化してきます。高体温による臓器障害が強くなる可能性が

あるため医療機関を速やかに受診してください。

かすやキッズネット6月号

 今月(第170号)はHPVワクチン (9):その2』です。

 

【接種スケジュールの考え方】


2.これまでHPVワクチンを接種したことがない方

 ①接種日が「12歳になる日の属する年度の初日

        〜15歳の誕生日の前日」の場合:

2回接種  接種間隔は5ヶ月以上

*接種間隔が5ヶ月未満の場合は 3回接種

 ②接種日が「15歳の誕生日16歳となる日の

属する年度の末日」の場合:

3回接種 1回目と2回目の接種間隔は1ヶ月以上

       2回目と3回目の接種間隔は3ヶ月以上

    *標準的な接種スケジュールは

2回目は1回目から2ヶ月後

     3回目は1回目から6ヶ月後

 

(注)4/1生まれの方の接種開始日や接種最終日の

考え方やキャッチアップ接種になどについて

不明な点がある方は粕屋町に問い合わせ下さい。

かすやキッズネット5月号

 今月(第169号)はHPVワクチン (9):その1』です。

                             

HPVワクチンとは子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス

(HPV)の感染を防ぎ、子宮頸がんの発症を防ぐワクチンです。

従来の2価・4価のHPVワクチンに加え、9HPVワクチン

(9種類のHPVに対するワクチン4月から定期接種として

スタートしました。本ワクチンによって子宮頸がんの原因となる

HPV感染の8090%を防ぐといわれています。


【対象者】

・定期接種対象者:12歳になる年度の初日〜

16歳になる年度の末日に属する女子

・キャッチアップ接種対象者:H9(1997)42日生まれ

H20(2008)41日生まれの女性でHPVワクチン

を合計3回接種していない方は残りの回数をR7

(2025)3月末までは定期接種として接種できます。


【接種スケジュールの考え方】

1.これまでHPVワクチンを1 or 2回接種したことがある方

➡ 合計3回となるように残りの回数を接種できます。

2価・4価ではなく9HPVワクチンでの接種も可能です。

(次号に続く)

(注)不明な点は粕屋町に問い合わせ下さい

かすやキッズネット4月号

 今月(第168号)は4月からの定期予防接種の変更』
です。

                             

20234月から 以下の定期予防接種が変更されます。


4種混合ワクチン】生後2ヶ月からスタート へ変更。


HPVワクチン】従来の2価・4価ワクチンに加えて

9価ワクチンが定期接種として接種可能となります。

この9価ワクチンは・・・

・対象者:12歳になる年度初日から16歳になる年度

末日に属する女子

・接種回数:3回接種(2回接種は協議中)

標準的な 接種間隔:2回目は初回接種の2ヶ月後

3回目は同6ヶ月後

・交互接種:すでに2価・4価ワクチンで定期接種の一部を

終了している者が残りの接種を9価ワクチンで

接種することも可能(医師と協議の上)

2回接種:対象者・接種間隔は協議中


(注)9価のHPVワクチンは3月上旬時点 では不明な点が

あります。また紙面のスペースの制約上、要点のみを

記載せざるを得ません。不明な点や詳細に関して

は粕屋町に問い合わせください。

かすやキッズネット3月号

 今月(第167号)は『粕屋町の予防接種助成事業』です。

                             

現在、以下の予防接種費用助成事業が行われています。

対象の方はご検討されたらいかがでしょうか?

助成期間も含めた詳細は粕屋町にお問い合わせください。


★風しん予防接種

 (クーポン券が発行された定期接種ではありません)

・対象者:粕屋町に住民票があり被接種者の*風しん抗体値

     の低値が確認できる 妊娠希望者もしくは妊娠希

     望者・妊婦の配偶者(パートナーを含む)・同居者

・助成金額:接種者一人あたり5,000円を上限(償還払い)

(注)妊娠希望者等に帯する風しん抗体検査は福岡県の事業

  で無料で実施されています「福岡県HP」を参照下さい.


★子宮頸がん予防接種(キャッチアップ接種について)

・対象者:H9年度〜H17年度(1997/4/2/4/22006/4/1)

   生まれの女子なおH18年度〜H19年度(2006/4/2〜

   2008/4/1) に生まれた方は通常の接種対象年齢を

   超えても合計3回の接種が終わっていなければキャッチアップ

   接種の対象となります

・接種可能期間:R7年度末(20253月末)まで


★おたふくかぜ予防接種:紙面の都合上粕屋町HPを参照下さい.

かすやキッズネット2月号

 今月(第166号)は『ウイルス性胃腸炎』です。

                             

年明けからコロナウイルス感染症・インフルエンザに加えて、

ウイルス性胃腸炎のお子さんが増えてきた印象です。


代表的なウイルスはノロウイルス・ロタウイルスで感染力が強く吐物・便等

のウイルス汚染物との接触・経口感染によって発症します。


症状は嘔吐・下痢・腹痛・発熱・悪寒・だるさ等です。


治療は経口摂取を制限しながら少量ずつの経口補水や

症状を緩和する対症療法で様子をみていきます。


発症後6時間程度は症状が強いため水分も含めた

経口摂取を制限します。

吐き気が落ち着いてきたら少量の水分を与えていきます。


ポイントは

・本人が欲しがっても無理せず少量ずつ与える.

・小さじ(5mL程度) 23杯程度から与えていく.

・白湯やお茶でもいいのですが適度の糖・塩分を含むもの

 が身体にとっては望ましいです

 果汁入のジュース・ゼリー・氷菓や果物のすり下ろし、

 市販の経口補水液を少量ずつ与える.


発症後半日近く経過すると多くのお子さんは症状のピークを

過ぎ、23日程度で治っていく事が多いです。

かすやキッズネット1月号

 今月(第165号)は『食物経口負荷試験』です。

                             

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。


私のクリニックでは食物アレルギー(FA)のお子さんを対象に月に

数人のペースで経口食物負荷試験(OFC)を行っています。


ガイドラインでは原因食物の厳格な除去ではなく

「必要最小限の除去」を推奨しており

「症状を誘発しない・食べられる範囲までは食べる」こと

奨めています。


従ってFAのお子さんには

OFCを行い食べられる量を推測し、徐々に摂取量を増やす」

段階的解除を行っています。


以下にOFCの流れを記します。


   即時型症状に関する問診

② OFCの適応ありと判断したらOFCの説明・同意・予約

OFC当日はアレルゲン食物を少量摂取し90120分経過後に

  誘発症状がないことを確認し帰宅

  自宅で同食物を指定の量•回数•期間で摂取

⑤ 数週間後に増量した同食物でOFCを行う 


以上①〜④を数ヶ月間繰り返し、段階的解除を目指します。

お子さんによっては1年以上かかるケースもありますが

多くのお子さんは完全解除に近い状態まで進むことが

できています。もちろん重度のFAのお子さんの場合

慎重な対応が必要ですし、専門医療機関との連携が必要となる

ケースもあります。

かすやキッズネット12月号

今月(第164号)は

『『赤ちゃんと蜂蜜:乳児ボツリヌス症』です。

                             

『赤ちゃんが蜂蜜を舐めましたがどうしたらいいでしょうか?

 乳児ボツリヌス症 を心配される問い合わせを時々いただきます.


以下本症のポイントを示します.


ボツリヌス菌は芽胞という硬い種子のような形態で土壌・川に

広く認めます真空パック・瓶缶詰中の存在が有名ですが

野菜・果物等への付着もありえますただ芽胞を摂取しても

通常は人間の腸内細菌の働きで菌は増殖できずボツリヌス毒素

も産生されずにおわります


例外的に赤ちゃんは腸内細菌の働きが未熟なため,

毒素が産生されて発症する可能性があります.


症状は330日の潜伏期間の後に, 35日以上続く便秘を認め,

その後活気低下・哺乳低下へと進展し眼瞼下垂・無表情・体幹や

手足の麻痺に至る場合があります時に呼吸管理が必要な場合も

あり注意深い観察と対応が必要なケースもあります.


*蜂蜜が原因?


蜂蜜を摂取した乳児の本症の発症頻度は不明です.

ただ最近30年間の報告を見ると本症と蜂蜜摂取との関連が明ら

かな事例は少ないようです

ちなみに市販の蜂蜜製品中にボツリヌス菌が混在しているのは

数パーセント以下?という記事を読んだ記憶がありますが・・・


 従って赤ちゃんが蜂蜜を舐めてしまっても慌てずに,

3日間以上続く便秘 と 元気がない・哺乳の低下 等に注意して観察

気になったら医療機関を受診することをアドバイスしています