2010年3月19日金曜日

日本脳炎ワクチンについて

昨日(3/18)午後より恒例?のこども健康教室を駕与丁公民館で行いました。テーマは『新しい予防接種』として、特に小児用肺炎球菌ワクチンや子宮頸がん予防ワクチンを中心にお話ししました。お母さん方からの質問としては・子宮頸がんワクチンの接種年齢や副反応・Hibワクチンの接種年齢(上限)・接種費用についての質問がありました。また日本脳炎ワクチンについては「接種すべきか?」について悩まれている方が多い印象を受けました。医師の中でも様々な考えがあるため、親御さん達が混乱されているのも当然かと思います。
僕自身は以下のように考えています。確かに日本では日本脳炎の発症は非常に少ない(発症は毎年数名程度で、感染しても1000人に1人程度の発症)。ただ日本との環境の違いがあるとはいえ、現在も世界的にはワクチン接種率の低い東南アジアを中心に年間3〜5万人の発症があり、いったん発症すると死亡率が約20%、神経学的後遺症を50%に残すと言われている。西日本では豚への日本脳炎ウイルスの感染は高率にあっている。安全性に関しては他のワクチンと比較しても問題はなさそうである。今後日本脳炎ウイルスの毒性の変化の可能性もある?・・・ 以上を考えると日本脳炎ワクチンは接種しておいてもいいのではないかと考えます。

かすやキッズネット2010年4月号

新年度となるためざっとポイントをのべます。【BCG】粕屋地域では4月よりBCGワクチンが集団接種から個別接種に変わります。接種は生後3ヶ月以上から6ヶ月未満までの3ヶ月間という限られた期間です。接種医療機関は各自治体の広報誌に掲載される予定です。【小児用肺炎球菌ワクチン】2月末より接種開始となりました。髄膜炎などの重症細菌感染症のほとんどはHib (インフルエンザ菌b型) とこの肺炎球菌が原因菌です。欧米ではすでにHibワクチンと同様にその効果は認められています。生後2ヶ月以降から接種可能で、接種年齢(月齢)によって接種回数が異なります。ただ任意接種であるため接種費用は実費負担となり、1回あたり1万円前後になるようです。【日本脳炎ワクチン】2005年からの積極的勧奨の差し控えは続いたままですが、本年3月でマウス脳由来ワクチンが使用できなくなったため、今後は乾燥培養ワクチンのみでの接種となります。これによりこれまでの制約がとれてくると考えられます。【子宮頸がん予防ワクチン】昨年12月より接種が開始されました。治療ではなく予防のワクチンであるため、10代前半の女性の接種がすすめられています。【MRワクチン】福岡県は平成21年度12月末の時点で第3期接種率が全国でも低いレベルのようです。第234期は年度が替わると公費負担がなくなり有料となります。注意しましょう!ふたばこどもクリニック

2010年3月3日水曜日

第5回こども健康教室のご案内


【テーマ】『新しい予防接種について』

【日時】2010年3月18日(木曜日)
    午後2時20分〜午後3時

【場所】駕与丁公民館


 ☆ つどいの広場の一環として、
   ご気軽に参加下さい。
 
 ☆ 参加費は無料です。




 ☆ これまでの『こども健康教室』

第1回『予防接種について』(2009年4月23日)
第2回『アトピー性皮膚炎』(2009年6月25日)
第3回『予防接種(2)』 (2009年9月17日)
第4回『こどもの事故』  (2009年11月26日)

かすやキッズネット2010年3月号

今月は『BCGワクチン』です。

本年4月より粕屋地域ではBCGワクチンが集団接種から個別接種に変わります。これまでは指定された日時に公的施設(保健センターなど)に『集まって接種』していましたが、4月からは親御さんが各医療機関に予約をして『個別に接種』することになります。【結核】日本では年間約25000人の発病があり、先進国の中では罹患率が高いといわれれています。特に乳幼児が結核に罹患した場合、抵抗力が弱いため髄膜炎などの重症結核症となり後遺症を残す可能性があります。【BCG】結核発病予防のワクチンがBCGです。BCGを接種しても将来結核にかかる可能性がゼロとなるわけではありませんが、少なくとも乳幼児の重症結核に対しては高い予防効果があるといわれています。【接種時期】生後3ヶ月以上から6ヶ月未満までの3ヶ月間という限られた期間です。【接種方法】9本の針がついた管針を用いて上腕に接種します。【接種部位の変化】接種後10日位から針痕に小さい発赤・膨隆が出現し、3040日後がピークとなります。これは正常な反応です。【接種後早期の反応】前述とは異なり、接種後早期に(接種後3日以内、遅くても710日以内)、針痕に発赤・膨隆などの変化を見た場合には速やかに医療機関を受診して下さい。【副反応】接種1〜2ヶ月後に接種した側のわきの下のリンパ節がはれることが1%程度に認められますが、通常は自然軽快していきます。 ふたばこどもクリニック とねがわ

かすやキッズネット2010年2月号

今月は『子宮頸がん予防ワクチン』です。

昨年12月より子宮頸がん予防ワクチンが発売され接種が始まりました。【子宮頸がん】子宮頸がんは乳がんに次いで発症率の高い女性のがんで、日本では年間約15000人が罹患し、約3500人の方々がなくなっており、また20〜30歳代の若い女性に増加しています。【原因】ヒトパピローマウイルス(HPV)、その中の発癌性HPVの感染が主な原因と考えられています。ただ発癌性HPV自体は珍しいウイルスではなく多くの成人女性に感染歴があると言われています。感染してもほとんどの人では一過性の感染で終わるのですが、1000人に1〜2人の割合で持続感染が起こり、10数年後に子宮頚部の細胞を癌化すると言われています。【ワクチン】このワクチンは既に100ヵ国以上で承認されており、日本でもこのワクチンの接種によって7〜8割の子宮頸がんの発症が防げるとされています。10歳以上の女性から接種可能であり、特にHPVに感染する前の10代前半に接種することががすすめられています。接種回数は3回で、6ヶ月の間に行います。ただし任意接種のため実費負担となり、3回の合計接種費用は4〜5万円程度になると考えられます。関心のある方はかかりつけの医師にご相談されたらいかがでしょうか。(ワクチン接種によってすべての子宮頸がんの発症が防げるわけではないので20歳を過ぎたら定期的な検診が必要と考えます) ふたばこどもクリニック とねがわ

かすやキッズネット2010年1月号

今月は『おねしょ』です。

「おねしょ=夜尿」に対して『自然に治るので大丈夫。でも病院を受診した方がいいのかな・・・』と考えている親御さんもいるかもしれません。夜尿は5歳でも5人に一人認めるといわれており、成長とともに自然に少なくなるため幼児期の夜尿はあまり問題がないと考えてよいでしょう。ただ小学校入学後も週の半分以上に夜尿を認める場合には治るのに数年以上かかることもあるため、小学校入学後も夜尿が続いている場合を「夜尿症」として「夜尿=おねしょ」と区別しています。この「夜尿症」の治療の柱としては、生活指導・薬物療法・行動療法(夜尿アラームなど)があります。生活指導では就寝前の水分摂取制限・排尿習慣や夜間の冷え対策などがあります。夜中に子どもを起こすことについては日本では否定的な意見が強く、また紙おむつ使用の是非についても様々な意見があるようですが、まだ一定の見解はないと考えます。薬物療法については省略しますが、行動療法では夜尿アラームの有効性が報告されています。ただアラームが鳴った時の家族への影響や金銭的負担(機種にもよるが本体1万+α程度)が検討事項となります。他には毎日尿量を計測し、夜尿症のタイプによって治療法を検討していく方法もあるようです。最後になりましたが一年間の連載に感謝しております。今後も細々と続ける予定ですが、テーマのご要望があれば担当までご連絡下さい。ふたばこどもクリニック:とねがわ

かすやキッズネット2009年12月号

今月は『小児用肺炎球菌ワクチン』です。

日本でもHibワクチン(*4月号参照)に続き望まれていた、小児用肺炎球菌ワクチン(商品名プレベナー)が来春に発売される予定です。なお現行の成人向け(2歳以上)肺炎球菌ワクチンは、乳幼児には効果はないとされています。【肺炎球菌とは?】こどもでは乳幼児の髄膜炎・中耳炎・肺炎の原因となります。【肺炎球菌髄膜炎とは?】肺炎球菌の感染ですぐに重症感染症を起こすことは少ないのですが、脳や脊髄を包む髄膜に感染してしまうと髄膜炎として重症な病気となってしまいます。初期症状では風邪との区別がつかず、最終的には腰椎内に針を刺す特殊な検査をしないと診断がつきません。治療にもかかわらず亡くなる方は約10%、後遺症率は約30%と非常に厳しい病気です。細菌性髄膜炎の原因の約60%Hibで、約20%がこの肺炎球菌が原因といわれており、Hib髄膜炎にくらべて発症は少ないですが、死亡率・後遺症率がやや高いようです。【ワクチンは?】『予防が最大の決め手』として世界100ヵ国近くで認可されており、米国では乳幼児の重症肺炎球菌感染症が8割以上激減するなどその効果も確認されています。日本では、生後2ヶ月以降からの接種となると考えられ、接種年齢(月齢)によって接種回数が異なると考えられます。ただ任意接種であるため接種回数に応じた実費負担となります。これから来春にかけて詳細が明らかになってくるでしょう。ふたばこどもクリニック:とねがわ

かすやキッズネット2009年11月号

今月は『新型インフルエンザワクチン』です。

10/10時点で確認できる厚労省の資料を参考に述べます。『ワクチンの有効性は期待できるが、接種したからといって必ず感染を防げるわけではない・当面ワクチン量には限りがあるため優先順位を決めて接種する・10月下旬より医療従事者に接種開始し、11月より妊婦や最優先基礎疾患をもつ方12月よりその他の基礎疾患をもつ方や1歳〜小学3年生以下の小児1月より1歳未満児の保護者や小学46年生の児童、その後中学生、高校生、65歳以上の高齢者に順次行う予定のようです。(高卒以上〜64歳以下の方で、指定基礎疾患のない方・お子さんに乳児のいない方・医療従事者ではない方や、1歳未満の乳児は優先接種者にはなっていないようです。これらの方々には上記接種が終了後にワクチン量を踏まえて対応していくようです)・10月中〜下旬には接種医療機関が決まり、必要書類(例えば妊婦さんでは母子手帳)を提示の上接種となります。*具体的な日程等については接種医療機関にお問い合わせ下さい。
余談ですが、先日第9回よさこいかすや祭りがありました。新型インフルエンザの影響で多少制約はつきましたが、踊り子さん・観客・実行委員・ボランティアの方々の熱気と情熱ですばらしいお祭りであったと思います。来年は第10回という記念大会になるとのことで、更なる成功を応援したいと思います! ふたばこどもクリニック院長:とねがわ

かすやキッズネット2009年10月号

今月は『新型インフルエンザ』です。

新型インフルエンザ(A型/H1N1亜型)は福岡県でも8月に入り流行を認め、第36週(8/319/6)は定点当たりの患者数は3.58と全国平均の2.62を上回っている状況です。周辺地域でも患者数は増加してきており、今後粕屋町でも流行が予想されます。新型インフルエンザの特徴は・感染発症率が高い・多くの人は重症化しない・ただ従来の季節性インフルエンザと違い、若年者にも呼吸不全例が報告されている・リスクのある人は要注意・乳幼児では脳症の疑い(意識レベルの低下、異常言動)や呼吸症状の悪化(息苦しさ、喘鳴)に注意する・発病早期(半日以内)では診断が困難な事が多い・新型インフルエンザワクチンの効果についてはどこの国もデータを持っていない(あまりに過大な期待は?)・接種時期(10月下旬?)、接種対象者(優先者)、接種医療機関(限定される)などの検討事項がある(今秋〜冬の流行には間に合わない可能性がある)・ちなみに従来の季節性インフルエンザワクチンの生産量は昨年の8割程度であり、また医療機関への供給方法にも制約がついている状況です。*個人的にはインフルエンザに限らず風邪でもまれに脳症・呼吸不全をきたすことはあるため、インフルエンザの診断に過剰に重きをおくより、経過の中で病勢を判断・ケアしていく姿勢が基本ではないかと考えます。更にもっと大事なのは、病気に負けない体を創るための毎日の食事・生活ではないかと考えますが・・・ ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年9月号

今月は『学童の肥満』です。

粕屋地域でも学校心臓検診で生活習慣病のスクリーニングが始まりました。先日学校検診協議会があり、その中で印象に残った点を記します。『①軽い肥満は大丈夫?「学童」では「軽度」肥満であっても既にインスリン抵抗性が高い児童がおり、成人期に糖尿病・脳卒中・心疾患の発症が憂慮される。②小学校に行けばやせる?小学校入学直後に急激に体重増加するケースが多い。幼稚園児の1日の運動時間は平均3時間で、小学生では80分程度と半減しているとのデータもあり、運動時間との関連も指摘されている。③肥満の治療は難しい?食事:空腹感をともなわない食事摂取が有効であり、ひとつの方法としてかむ回数を設定・実行することをすすめる。また朝食はきちんととる。運動:休日(月に8日程度)には160分以上の運動(ウオーキングなど)を実行する。このように具体的な項目・数値を設定し、チェックシートで毎日チェックする。実際にこの方法で70%以上の児童に肥満改善を認めた。短・中期的には肥満治療はそれほど困難ではないのかもしれない。④急にやせるのはいけない?肥満治療を開始した場合、最初のひと月から効果(体重減少)を認める。認めない場合はその後の治療効果が困難と予想される。最初の取り組みが肝心である。』以上です。日々の外来で実践されているDrの話であり、非常に説得力を感じました。夏休みで二次検診で当クリニックを受診されるお子さんもいますが、上記をポイントに診療に取り組もうと思いました。 ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年8月号

今月は『本の紹介』です。

突然ですが、皆さんは今春に発刊された『子育てハッピーアドバイス小児科の巻』をご存知でしょうか?僕も遅ればせながら最近読んだのですが、おもしろくてためになる本なので皆さんに紹介したいと思います。 僕は少なくとも治療に関してはシンプルにありたいと思っています。たとえば2月号で「発熱」について書きましたが、ほとんどの発熱はウイルスによる気道感染症(かぜ)であり、特別な治療を行わなくても23日で解熱するものがほとんどです。ただ時に重篤な病気がかくれていることもあるので、年齢・病日・随伴症状がポイントと考え、経過の中で判断していくことが大事であると考えています。したがって発熱してまだ1日以内であれば、問診・診察の上よく考えて、抗生剤は出さずに対症療法の薬だけで様子をみることがほとんどです。念のため採血をしてもほとんどのお子さんは炎症データは悪くなく、数日の経過で軽快していくことがほとんどです。 この本は、正しい知識を伝えて、親御さんに安心と自信を持ってもらうことを目的に書いてあります。ざっとページをめくってもキーワードがたくさんあります。〜発熱はワルモノじゃない、発熱してすぐに受診しても早く治るわけではない、解熱剤で病気は治りません、風邪薬は風邪そのものを治す薬ではありません、風邪そのものに効く薬はありません、よくある病気の大部分はこどもが自分の力で治している、小児科は重い病気のサインがないかチェックするところ、医師の「わかる」とママたちの「わかる」は少し違う・・・などなどです。一読をおすすめします。 ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年7月号

『日本脳炎』について。

日本脳炎ウイルス】日本脳炎ウイルスは豚に感染・増殖し、免疫のない母豚では流産をおこします。その豚の血を吸った蚊は死ぬまで(1ヶ月程度)ウイルスを体内にもっており、人間の血を吸う時にウイルスを感染させます。豚への感染が高率であること、蚊の移動距離(1030km?程度)や生息時期(春〜秋)、人から人への感染がないことを考えると、地域性や季節性を考慮すべきと考えます。【日本脳炎】東南アジアを中心に年間3〜4万人の発症があります。日本では1960年代までは毎年1000人以上の発症がありましたが、その後は激減し現在は年間10人以下の発症です。この効果はワクチンによるものが大きいと考えます。人間では感染してもほとんどの人は発症せず、感染しても1000人に数人程度(1%以下)の発症のようですが、発症した場合は20%程度の死亡率や後遺症が問題となります。【ワクチン】因果関係不明な重篤な脳脊髄炎の報告があったため、2005年から積極的勧奨は差し控えのままになっています。6月に新しい日本脳炎ワクチンが発売されましたがこの状況は変わっていません。ただお子さんの年齢・接種状況によっては定期接種としての扱いも可能となります。夏を控えた今の時期、接種の是非も含めてかかりつけの先生と相談されてはいかがでしょうか?(新ワクチンも、接種もれ者の扱い・旧ワクチン接種者の今後の接種・ワクチンの不足などの問題もありますので今後の厚労省の対応に注目しましょう)

625日(木曜日)1420分〜15時の予定で、こども健康教室『アトピー性皮膚炎』を駕与丁公民館にて開催します。つどいの広場の一環としてお気軽にご参加下さい。なおテーマなどについてご要望があれば、かすやキッズネット(938-6844)までお寄せ下さい。ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年6月号

『川崎病』について。

川崎病】川崎病は耳にする機会も少なくないと思います。約40年前に日赤医療センターの川崎先生によって報告され、川崎病と命名されました。現在も原因は特定できていませんが、小血管に炎症が起こっていることがわかっています。3歳未満の乳幼児に多く、全国では年間約8千〜1万人程度、福岡県では年間約300人程度の報告があり、こどもの病気としてはまれなものではありません。基本的には予後良好な病気ですが、まれに心臓の冠動脈に後遺症を残すことがあるため、ちょっと注意が必要な病気です。

診断】①(5日間以上の)発熱 ②発疹 ③目の充血 ④唇の紅潮 ⑤手足の指などの紅潮・腫脹 ⑥首のリンパ節の腫脹 以上の6項目のうち5つ以上を認めれば診断できますが、不全型もあるため慎重な判断が必要な時もあります。またBCG痕の発赤も参考となります。乳幼児で23日続く発熱に発疹をともなってくれば、川崎病も念頭におきながら診療することが一般的と考えます。

治療】川崎病と診断されれば、原則入院の上、免疫グロブリンの点滴(12日間)、抗炎症薬の内服(退院後も含め12ヶ月間)を行います。10日間程度で退院できることが多く、退院後は定期検診を数年間行いますが、運動制限などはせずに普通の生活が送れることがほとんどです。*ちなみに当クリニックでも定期検診は行っています。

625日(木曜日)1420分〜15時の予定で、こども健康教室を駕与丁公民館にて開催します。つどいの広場の一環としてお気軽にご参加下さい。なおテーマについてご要望があれば、かすやキッズネット(938-6844)までお寄せ下さい。ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年5月号

『赤ちゃん』のアトピー性皮膚炎について。

アトピー性皮膚炎】アトピー性皮膚炎という言葉は耳にする機会も多いと思いますが、まだまだ不明な点も多いようです。ただ以前のようにアレルギーとの関係はあまりクローズアップされておらず、皮膚の一番上の薄い角質層(乳児では0.1mm以下)の働きが弱いことによる様々な皮膚の症状と考えられています。当然ながら赤ちゃんの皮膚はまだ弱く、アトピー性皮膚炎を発症することは十分にありえます。ちなみに4ヶ月の赤ちゃんの1割以上にアトピー性皮膚炎を認め、その多くは数年のうちに治っていきます。

アトピー性皮膚炎と食物アレルギー】学会ガイドラインによるアトピー性皮膚炎の診断基準は「①痒みをともなう湿疹②乳児では顔>体 に多い③慢性の経過」であり、食物アレルギーに関しては必須項目としては問うていません。たしかに「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」はあるのですが、全てのアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与しているわけではありません。(この辺は専門家の中でも少し議論はありますが・・・)一般に赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は皮膚の未熟性に起因することが多く、「アトピー性皮膚炎=食物アレルギー」とすぐに結びつけなくてもよいと考えます。明らかな誘因がある場合は別として、まずはスキンケアと塗り薬で治療し、それでも改善しなければ原因食物を考える・・・という順序でよいと僕は考えます。

アトピー性皮膚炎の治療】①スキンケア:きれいに、そしてしっとり〜清潔・保湿・刺激をさける。②塗り薬:乳児ではステロイドの塗り薬が中心になると考えます。十分な量を塗り、その後症状にあわせて塗る間隔をあけていきます。

423日(木曜日)1420分〜15時の予定で、こどもの健康教室を駕与丁公民館にて開催します。テーマは『予防接種』の予定です。つどいの広場の一環としてお気軽にご参加下さい。ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年4月号

日本でもようやく() 昨年12月よりヒブ(Hib)ワクチンの接種が開始されました。

Hibとは?】ヘモフィルスインフルエンザ菌b型という菌のことです。冬季に流行するインフルエンザウイルスとは全く異なります。

Hib髄膜炎とは?Hib感染ですぐに重症感染症を起こすことは少ないのですが、脳や脊髄を包む髄膜に感染してしまうとHib髄膜炎として非常に重症な病気となってしまいます。5歳未満の乳幼児、特に0〜1歳台のこどもにかかりやすく、日本では年間6001000人程度(5歳までの乳幼児2000人に1人程度)が発症しており、約5%に死亡・約25%に重い後遺症を認めています。初期症状では風邪との区別がつかず、最終的には腰椎内に針を刺す特殊な検査(髄液検査)をしないと診断がつきません。

Hibワクチンとは?】初期診断が困難で重症感染症であるHib髄膜炎に対して『予防が最大の決め手』として世界的には10年以上前からワクチン接種が導入されています。現在では100ヵ国以上で接種されており、定期接種となっている米国ではHib髄膜炎の発症率が100分の1程度にまで激減するなどその効果も確認されています。

Hibワクチン接種にあたっての問題】①ワクチン不足。②年齢による接種回数の違い。③任意接種であるため、接種回数に応じた実費負担。現在①が問題となっていますが、乳幼児のいるご家庭では接種を検討され、かかりつけの医師にご相談されてみてはいかがでしょうか?

4月より子どもたちの健康教室を開催します。駕与丁公民館にて、偶数月の第4木曜日、14時〜15時の間の30分程度です。つどいの広場の一環としてお気軽にご参加下さい。第1回目は423日です。テーマについてご要望がありましたら、かすやキッズネット(9386844)までお寄せ下さい。ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年3月号

今回は「インフルエンザ」について。ヒトインフルエンザウイルスは冬季に世界各地で流行を繰り返し、人口の520%が罹患するといわれています。13日間の潜伏期間の後に突然38℃以上の高熱が出現し、頭痛・倦怠感などの全身症状が強いのが特徴です。診断キットを用いれば10分程度で診断できるのですが、発病早期(半日以内)では診断できないことがあります。発病は小児に多く、健康な人には抗ウイルス薬がなくても4〜5日間で軽快し、また抗ウイルス薬は発熱期間を1日程度短くする効果があるといわれています。なお解熱が2日間確認できれば3日目より登園・登校が可能となります。数は少ないものの重い合併症である脳炎・脳症は1〜5歳の幼児に多く、ワクチンや抗ウイルス薬の効果は不明とされています。発熱2日以内の早い時期から反応に乏しい・けいれん等を認める場合には注意が必要です。死亡例は高齢者に多く、その多くは肺炎の合併によるものです。日本でのインフルエンザワクチンは1994年より任意接種となり、現在のワクチンの基本的な考え方は<リスクの高い人たちの重い合併症や死亡を予防する>ことであり、全国民のインフルエンザ発症を予防することではありません。現在のワクチンでそこまでの効果を求めるのは困難と考えます。接種に当たっては、①発病時のリスク(高齢者の肺炎や幼児の脳炎・脳症)②ワクチンの有効性(一般に乳幼児へのワクチンの効果は低い)③高齢者や幼児の周辺の人々へのワクチン接種も検討・・・などがポイントと考えます。* 新年度より当クリニックではお母さん方を対象とした健康教室を企画中です。次号で案内予定です。ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年2月号

今回は「発熱」について普段考えている事を述べます。発熱は、多くは風邪(ウイルス感染が多い)によるものであり、数日の経過で軽快していく事が多いのですが、時に重篤な病気が潜んでいたり、合併してくることがあります。僕が発熱のお子さんを前にして考えることは、①早期に強い医療介入が必要な状態か?②今後の見通しはどうか?(見通しを立てるだけの時間的猶予はどれ位あるか?)の2点です。①②を推測していく上でのポイントは、年齢・病日・随伴症状であると考えます。まず年齢では、乳児では重症細菌感染症(化膿性髄膜炎など)が まれに潜んでいることがあります。特に34ヶ月未満の乳児では注意深い観察・早い対応を必要とする場合もあるため、早目の医療機関の受診を勧めます。次に病日(病勢)ですが、通常かぜでは23日の経過で解熱傾向を認めますが、改善がない場合には、重症化もしくは風邪以外の病気や合併の可能性も考えます。次に随伴症状(および全身状態)ですが、乳幼児では発疹・充血・指趾の紅潮などがあれば川崎病の可能性も考えます。発熱以外に鼻水・咳がなければ尿路感染の可能性も考えます。咳・喘鳴などの呼吸症状が強ければ、呼吸のサポートも検討します。鼻症状・耳症状があれば中耳炎の可能性も考えます。また熱の高さは必ずしも重症度とは一致せず、異常言動・意識状態の程度が脳炎・脳症の重要なサインとなります。以上を考えながら診察していき、経過の中で判断していきます。発熱は苦しいものであり、周囲の者にとってもつらいものです。しかし感染症で発熱するのは進化の過程で獲得した生物としての人間の生きる術と考えます。発熱のみにとらわれず、上記①を見逃さず、②をきちんとたてる診療をしていきたいと考えます。 ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ

かすやキッズネット2009年1月号

★今月より“とねがわ先生”のご協力により小児科の先生から見たプチアドバイスのコーナーがスタート!!第1回目は『ノロウィルスについて』です。

このウィルスは乾燥・冷環境に強く、また感染力も強いため、初冬から感染性胃腸炎として集団発症します。潜伏期間は1248時間と短く、症状は嘔吐・下痢・発熱・体のだるさ等があり、小児では嘔吐が強い傾向にあります。特殊な検便で診断可能ですが、時間も検査料も要するため、実際には流行状況や診察所見を参考にしながら診断していきます。治療法としては有効な抗ウィルス薬はなく、腸の安静と対症療法で様子をみていきます。初期の嘔吐が強い数時間は絶食とし、嘔吐が落ち着いたら少しずつ水分を与えながら経過をみていくと、ほとんどは半〜1日をピークに、23日間で軽快していきます。急患センターでぐったりとしたお子さんが長時間待機しているのを見かけますが、発症して数時間以内であれば、まずは自宅で安静にして経過を看るほうがお子さんにとっていいのではないか、と僕は考えます。ただ、元気がない・ぼ-っとしている・水分をのまないということが1日以上続くようであれば受診をおすすめします。 医療とは多様性をひめた対象へのアプローチ(推測)であり、そのためには病気のおおまかなイメージが必要と考えます。そのお手伝いができればと思います。よろしくお願いします。

ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ