2010年3月19日金曜日
日本脳炎ワクチンについて
僕自身は以下のように考えています。確かに日本では日本脳炎の発症は非常に少ない(発症は毎年数名程度で、感染しても1000人に1人程度の発症)。ただ日本との環境の違いがあるとはいえ、現在も世界的にはワクチン接種率の低い東南アジアを中心に年間3〜5万人の発症があり、いったん発症すると死亡率が約20%、神経学的後遺症を50%に残すと言われている。西日本では豚への日本脳炎ウイルスの感染は高率にあっている。安全性に関しては他のワクチンと比較しても問題はなさそうである。今後日本脳炎ウイルスの毒性の変化の可能性もある?・・・ 以上を考えると日本脳炎ワクチンは接種しておいてもいいのではないかと考えます。
かすやキッズネット2010年4月号
2010年3月3日水曜日
第5回こども健康教室のご案内
かすやキッズネット2010年3月号
今月は『BCGワクチン』です。
かすやキッズネット2010年2月号
今月は『子宮頸がん予防ワクチン』です。
昨年12月より子宮頸がん予防ワクチンが発売され接種が始まりました。【子宮頸がん】子宮頸がんは乳がんに次いで発症率の高い女性のがんで、日本では年間約15000人が罹患し、約3500人の方々がなくなっており、また20〜30歳代の若い女性に増加しています。【原因】ヒトパピローマウイルス(HPV)、その中の発癌性HPVの感染が主な原因と考えられています。ただ発癌性HPV自体は珍しいウイルスではなく多くの成人女性に感染歴があると言われています。感染してもほとんどの人では一過性の感染で終わるのですが、1000人に1〜2人の割合で持続感染が起こり、10数年後に子宮頚部の細胞を癌化すると言われています。【ワクチン】このワクチンは既に100ヵ国以上で承認されており、日本でもこのワクチンの接種によって7〜8割の子宮頸がんの発症が防げるとされています。10歳以上の女性から接種可能であり、特にHPVに感染する前の10代前半に接種することががすすめられています。接種回数は3回で、6ヶ月の間に行います。ただし任意接種のため実費負担となり、3回の合計接種費用は4〜5万円程度になると考えられます。関心のある方はかかりつけの医師にご相談されたらいかがでしょうか。(ワクチン接種によってすべての子宮頸がんの発症が防げるわけではないので20歳を過ぎたら定期的な検診が必要と考えます) ふたばこどもクリニック とねがわ
かすやキッズネット2010年1月号
今月は『おねしょ』です。
「おねしょ=夜尿」に対して『自然に治るので大丈夫。でも病院を受診した方がいいのかな・・・』と考えている親御さんもいるかもしれません。夜尿は5歳でも5人に一人認めるといわれており、成長とともに自然に少なくなるため幼児期の夜尿はあまり問題がないと考えてよいでしょう。ただ小学校入学後も週の半分以上に夜尿を認める場合には治るのに数年以上かかることもあるため、小学校入学後も夜尿が続いている場合を「夜尿症」として「夜尿=おねしょ」と区別しています。この「夜尿症」の治療の柱としては、生活指導・薬物療法・行動療法(夜尿アラームなど)があります。生活指導では就寝前の水分摂取制限・排尿習慣や夜間の冷え対策などがあります。夜中に子どもを起こすことについては日本では否定的な意見が強く、また紙おむつ使用の是非についても様々な意見があるようですが、まだ一定の見解はないと考えます。薬物療法については省略しますが、行動療法では夜尿アラームの有効性が報告されています。ただアラームが鳴った時の家族への影響や金銭的負担(機種にもよるが本体1万+α程度)が検討事項となります。他には毎日尿量を計測し、夜尿症のタイプによって治療法を検討していく方法もあるようです。最後になりましたが一年間の連載に感謝しております。今後も細々と続ける予定ですが、テーマのご要望があれば担当までご連絡下さい。ふたばこどもクリニック:とねがわ
かすやキッズネット2009年12月号
今月は『小児用肺炎球菌ワクチン』です。
日本でもHibワクチン(*4月号参照)に続き望まれていた、小児用肺炎球菌ワクチン(商品名プレベナー)が来春に発売される予定です。なお現行の成人向け(2歳以上)肺炎球菌ワクチンは、乳幼児には効果はないとされています。【肺炎球菌とは?】こどもでは乳幼児の髄膜炎・中耳炎・肺炎の原因となります。【肺炎球菌髄膜炎とは?】肺炎球菌の感染ですぐに重症感染症を起こすことは少ないのですが、脳や脊髄を包む髄膜に感染してしまうと髄膜炎として重症な病気となってしまいます。初期症状では風邪との区別がつかず、最終的には腰椎内に針を刺す特殊な検査をしないと診断がつきません。治療にもかかわらず亡くなる方は約10%、後遺症率は約30%と非常に厳しい病気です。細菌性髄膜炎の原因の約60%はHibで、約20%がこの肺炎球菌が原因といわれており、Hib髄膜炎にくらべて発症は少ないですが、死亡率・後遺症率がやや高いようです。【ワクチンは?】『予防が最大の決め手』として世界100ヵ国近くで認可されており、米国では乳幼児の重症肺炎球菌感染症が8割以上激減するなどその効果も確認されています。日本では、生後2ヶ月以降からの接種となると考えられ、接種年齢(月齢)によって接種回数が異なると考えられます。ただ任意接種であるため接種回数に応じた実費負担となります。これから来春にかけて詳細が明らかになってくるでしょう。ふたばこどもクリニック:とねがわ
かすやキッズネット2009年11月号
今月は『新型インフルエンザワクチン』です。
かすやキッズネット2009年10月号
今月は『新型インフルエンザ』です。
かすやキッズネット2009年9月号
今月は『学童の肥満』です。
かすやキッズネット2009年8月号
今月は『本の紹介』です。
突然ですが、皆さんは今春に発刊された『子育てハッピーアドバイス小児科の巻』をご存知でしょうか?僕も遅ればせながら最近読んだのですが、おもしろくてためになる本なので皆さんに紹介したいと思います。 僕は少なくとも治療に関してはシンプルにありたいと思っています。たとえば2月号で「発熱」について書きましたが、ほとんどの発熱はウイルスによる気道感染症(かぜ)であり、特別な治療を行わなくても2〜3日で解熱するものがほとんどです。ただ時に重篤な病気がかくれていることもあるので、年齢・病日・随伴症状がポイントと考え、経過の中で判断していくことが大事であると考えています。したがって発熱してまだ1日以内であれば、問診・診察の上よく考えて、抗生剤は出さずに対症療法の薬だけで様子をみることがほとんどです。念のため採血をしてもほとんどのお子さんは炎症データは悪くなく、数日の経過で軽快していくことがほとんどです。 この本は、正しい知識を伝えて、親御さんに安心と自信を持ってもらうことを目的に書いてあります。ざっとページをめくってもキーワードがたくさんあります。〜発熱はワルモノじゃない、発熱してすぐに受診しても早く治るわけではない、解熱剤で病気は治りません、風邪薬は風邪そのものを治す薬ではありません、風邪そのものに効く薬はありません、よくある病気の大部分はこどもが自分の力で治している、小児科は重い病気のサインがないかチェックするところ、医師の「わかる」とママたちの「わかる」は少し違う・・・などなどです。一読をおすすめします。 ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ
かすやキッズネット2009年7月号
『日本脳炎』について。
【日本脳炎ウイルス】日本脳炎ウイルスは豚に感染・増殖し、免疫のない母豚では流産をおこします。その豚の血を吸った蚊は死ぬまで(1ヶ月程度)ウイルスを体内にもっており、人間の血を吸う時にウイルスを感染させます。豚への感染が高率であること、蚊の移動距離(10〜30km?程度)や生息時期(春〜秋)、人から人への感染がないことを考えると、地域性や季節性を考慮すべきと考えます。【日本脳炎】東南アジアを中心に年間3〜4万人の発症があります。日本では1960年代までは毎年1000人以上の発症がありましたが、その後は激減し現在は年間10人以下の発症です。この効果はワクチンによるものが大きいと考えます。人間では感染してもほとんどの人は発症せず、感染しても1000人に数人程度(1%以下)の発症のようですが、発症した場合は20%程度の死亡率や後遺症が問題となります。【ワクチン】因果関係不明な重篤な脳脊髄炎の報告があったため、2005年から積極的勧奨は差し控えのままになっています。6月に新しい日本脳炎ワクチンが発売されましたがこの状況は変わっていません。ただお子さんの年齢・接種状況によっては定期接種としての扱いも可能となります。夏を控えた今の時期、接種の是非も含めてかかりつけの先生と相談されてはいかがでしょうか?(新ワクチンも、接種もれ者の扱い・旧ワクチン接種者の今後の接種・ワクチンの不足などの問題もありますので今後の厚労省の対応に注目しましょう)
かすやキッズネット2009年6月号
『川崎病』について。
【川崎病】川崎病は耳にする機会も少なくないと思います。約40年前に日赤医療センターの川崎先生によって報告され、川崎病と命名されました。現在も原因は特定できていませんが、小血管に炎症が起こっていることがわかっています。3歳未満の乳幼児に多く、全国では年間約8千〜1万人程度、福岡県では年間約300人程度の報告があり、こどもの病気としてはまれなものではありません。基本的には予後良好な病気ですが、まれに心臓の冠動脈に後遺症を残すことがあるため、ちょっと注意が必要な病気です。
【診断】①(5日間以上の)発熱 ②発疹 ③目の充血 ④唇の紅潮 ⑤手足の指などの紅潮・腫脹 ⑥首のリンパ節の腫脹 以上の6項目のうち5つ以上を認めれば診断できますが、不全型もあるため慎重な判断が必要な時もあります。またBCG痕の発赤も参考となります。乳幼児で2〜3日続く発熱に発疹をともなってくれば、川崎病も念頭におきながら診療することが一般的と考えます。
【治療】川崎病と診断されれば、原則入院の上、免疫グロブリンの点滴(1〜2日間)、抗炎症薬の内服(退院後も含め1〜2ヶ月間)を行います。10日間程度で退院できることが多く、退院後は定期検診を数年間行いますが、運動制限などはせずに普通の生活が送れることがほとんどです。*ちなみに当クリニックでも定期検診は行っています。
かすやキッズネット2009年5月号
『赤ちゃん』のアトピー性皮膚炎について。
【アトピー性皮膚炎】アトピー性皮膚炎という言葉は耳にする機会も多いと思いますが、まだまだ不明な点も多いようです。ただ以前のようにアレルギーとの関係はあまりクローズアップされておらず、皮膚の一番上の薄い角質層(乳児では0.1mm以下)の働きが弱いことによる様々な皮膚の症状と考えられています。当然ながら赤ちゃんの皮膚はまだ弱く、アトピー性皮膚炎を発症することは十分にありえます。ちなみに4ヶ月の赤ちゃんの1割以上にアトピー性皮膚炎を認め、その多くは数年のうちに治っていきます。
【アトピー性皮膚炎と食物アレルギー】学会ガイドラインによるアトピー性皮膚炎の診断基準は「①痒みをともなう湿疹②乳児では顔>体 に多い③慢性の経過」であり、食物アレルギーに関しては必須項目としては問うていません。たしかに「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」はあるのですが、全てのアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与しているわけではありません。(この辺は専門家の中でも少し議論はありますが・・・)一般に赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は皮膚の未熟性に起因することが多く、「アトピー性皮膚炎=食物アレルギー」とすぐに結びつけなくてもよいと考えます。明らかな誘因がある場合は別として、まずはスキンケアと塗り薬で治療し、それでも改善しなければ原因食物を考える・・・という順序でよいと僕は考えます。
【アトピー性皮膚炎の治療】①スキンケア:きれいに、そしてしっとり〜清潔・保湿・刺激をさける。②塗り薬:乳児ではステロイドの塗り薬が中心になると考えます。十分な量を塗り、その後症状にあわせて塗る間隔をあけていきます。
かすやキッズネット2009年4月号
日本でもようやく(?) 昨年12月よりヒブ(Hib)ワクチンの接種が開始されました。
【Hibとは?】ヘモフィルスインフルエンザ菌b型という菌のことです。冬季に流行するインフルエンザウイルスとは全く異なります。
【Hib髄膜炎とは?】Hib感染ですぐに重症感染症を起こすことは少ないのですが、脳や脊髄を包む髄膜に感染してしまうとHib髄膜炎として非常に重症な病気となってしまいます。5歳未満の乳幼児、特に0〜1歳台のこどもにかかりやすく、日本では年間600〜1000人程度(5歳までの乳幼児2000人に1人程度)が発症しており、約5%に死亡・約25%に重い後遺症を認めています。初期症状では風邪との区別がつかず、最終的には腰椎内に針を刺す特殊な検査(髄液検査)をしないと診断がつきません。
【Hibワクチンとは?】初期診断が困難で重症感染症であるHib髄膜炎に対して『予防が最大の決め手』として世界的には10年以上前からワクチン接種が導入されています。現在では100ヵ国以上で接種されており、定期接種となっている米国ではHib髄膜炎の発症率が100分の1程度にまで激減するなどその効果も確認されています。
【Hibワクチン接種にあたっての問題】①ワクチン不足。②年齢による接種回数の違い。③任意接種であるため、接種回数に応じた実費負担。現在①が問題となっていますが、乳幼児のいるご家庭では接種を検討され、かかりつけの医師にご相談されてみてはいかがでしょうか?
かすやキッズネット2009年3月号
かすやキッズネット2009年2月号
かすやキッズネット2009年1月号
★今月より“とねがわ先生”のご協力により小児科の先生から見たプチアドバイスのコーナーがスタート!!第1回目は『ノロウィルスについて』です。
このウィルスは乾燥・冷環境に強く、また感染力も強いため、初冬から感染性胃腸炎として集団発症します。潜伏期間は12~48時間と短く、症状は嘔吐・下痢・発熱・体のだるさ等があり、小児では嘔吐が強い傾向にあります。特殊な検便で診断可能ですが、時間も検査料も要するため、実際には流行状況や診察所見を参考にしながら診断していきます。治療法としては有効な抗ウィルス薬はなく、腸の安静と対症療法で様子をみていきます。初期の嘔吐が強い数時間は絶食とし、嘔吐が落ち着いたら少しずつ水分を与えながら経過をみていくと、ほとんどは半〜1日をピークに、2~3日間で軽快していきます。急患センターでぐったりとしたお子さんが長時間待機しているのを見かけますが、発症して数時間以内であれば、まずは自宅で安静にして経過を看るほうがお子さんにとっていいのではないか、と僕は考えます。ただ、元気がない・ぼ-っとしている・水分をのまないということが1日以上続くようであれば受診をおすすめします。 医療とは多様性をひめた対象へのアプローチ(推測)であり、そのためには病気のおおまかなイメージが必要と考えます。そのお手伝いができればと思います。よろしくお願いします。
ふたばこどもクリニック院長:とねがわやすひこ