2024年2月22日木曜日

かすやキッズネット3月号


 *粕屋町社会福祉協議会が毎月発行している
<かすやキッズネット>の『まちのお医者さん』
連載中です。

2024年1月19日金曜日

かすやキッズネット2月号

今月(178号) は『熱性けいれん』です。 

ガイドライン(2023)を踏まえて要点を述べます。


【救急車を呼ぶタイミング?】

けいれん発作や意識がはっきりとしない状態が

5分以上続く場合には

薬物による治療を考慮するため

救急車を呼ぶタイミングの目安となります。

もちろん、判断に迷う場合や

5分以内の発作であってもその後の

意識の回復がはっきりしない状況

続く場合も同様と考えます。


【熱性けいれんを複数回認めるが大丈夫?】

熱性けいれん歴のある子どもの多く(90%以上)は

てんかんを発症することはありません。

ただ数パーセントの子どもさんには

『てんかん』を発症するケースもあります。


*熱性けいれんを複数回認めた後に

「てんかん」を発症した場合、

これは 熱性けいれん➡『てんかん』

へ進展したのではなく

もともと『てんかん』の素因を有する者

“顕在化”したものと考えられます。


よって熱性けいれんの再発予防が

てんかん発症を予防するものでもありません。


【熱性けいれん後のワクチン接種時期?】

基本的に接種当日の体調に留意すれば

全てのワクチンを速やかに接種できます。

ただしけいれん発作が15分以上あった場合や

個別に注意が必要なケースもありますので

医療機関にご確認下さい。 


*この記事は粕屋町社会福祉協議会が

毎月発行している<かすやキッズネット>

の『まちのお医者さん』の欄に連載中です


2023年12月22日金曜日

かすやキッズネット1月号

今月(第177号)は『保険診療』です。

 

新年あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

今回は堅めのテーマです。

医師=「保険医」が行う診療行為(保険診療)は

“療養担当規則”というルールに則って行われます。


この“療養担当規則”では

「各種検査は診療上必要が認められる場合に行う」

とあります。

必要な検査項目を選択し

段階を踏んで検査を行うことが推奨されています。


例えば親御さんから「△△が流行っているので

検査を希望する」要望があっても

患児の症状(重症度)・経過・

見通し等もあわせて総合的に勘案して

検査の適応を判断します。


たしかに検査の適応の判断は難しいのですが

不顕性感染の可能性まで考えて

検査を際限なく行ってしまうと

日本の保険診療は破綻してしまいます。


限りのある医療資源の中で

患児の病態に即した診療を目指していきたい

ものです。


*この記事は粕屋町社会福祉協議会が

毎月発行している<かすやキッズネット>

の『まちのお医者さん』の欄に連載中です


2023年11月26日日曜日

かすやキッズネット12月号

 今月(第176号)は『ウイルス性胃腸炎』です。

11月中旬になり(原稿記載時)

朝晩は肌寒さも感じてきました。


インフルエンザに加えウイルス性胃腸炎の

お子さんも増えてきました。


代表的なウイルスはノロウイルスで

感染力が強く吐物・便等のウイルス汚染物

との接触・経口感染によって発症します。


症状は嘔吐・下痢・腹痛・発熱・悪寒・だるさ等です。


抗ウイルス薬がないため経口摂取を制限しながら

少量ずつの経口補水や症状を緩和する対症療法で

様子をみていきます。


発症後6〜8時間程度は症状が強いため

その間は水分も含めた経口摂取を制限します。


吐き気が落ち着いてきたら少量の水分

から与えていきます。


ポイントは

・本人が欲しがっても、少量ずつ与えていく

・小さじ(5mL程度) 23杯程度から与えていく

・白湯やお茶でもいいのですが

適度の糖・塩分を含むものが吸収が良く

身体にとっては望ましいです


*果汁入のジュース、ゼリーや果物のすり下ろし

市販の経口補水液など


発症後半日近く経過すると

多くのお子さんは症状のピークを過ぎ

23日程度で治っていく事が多いようです。

2023年10月20日金曜日

かすやキッズネット11月号

今月(第175号)は

『インフルエンザワクチン』です。

 

10月から インフルエンザワクチン 接種が医療機関で

開始されていると思います。

(今冬はコロナウイルス感染症との

同時流行も懸念されています)


【人間の免疫システム】

過去にインフルエンザの既往があっても感染して

しまうケースがあるように

そもそも人間の免疫システムがインフルエンザウイルスの

抗原変異に十分に対応できて

いないことが考えられます。


【ワクチンの効果】

現行の不活化スプリットワクチンでは

自然免疫系への刺激がなく

細胞性免疫の誘導ができないため

インフルエンザ感染歴が少ない乳幼児にはワクチンの

効果が限定的な傾向にあります。

またワクチンの製造過程での抗原性の変異による

有効性の低下(卵馴化)も指摘されています。


*今年のノーベル賞でも話題になりました

新しいmRNAの技術を使った

新しいワクチンの治験中であり

実用化が期待されています。


【同時接種】

インフルエンザワクチンとコロナワクチンとの

同時接種は可能です。

(インフルエンザワクチンとコロナワクチンの接種間隔に

特に制限はありません)


*この記事は粕屋町社会福祉協議会が

毎月発行している

<かすやキッズネット>  に連載中です



2023年9月23日土曜日

 かすやキッズネット10月号

 今月(第174号)は『たばこの誤飲』です。

子どものタバコの誤飲で問題となるのは

急性 ニコチン 中毒です。


大人は加熱・燃焼により発生した煙・蒸気中の

ニコチン を摂取しますが、子どもの誤飲では

製品そのものからダイレクトにニコチンを摂取してしまう

ため急性中毒の恐れがあります。


タバコ葉を摂取した場合は30分〜2時間以内に

症状が出現し、

タバコを水に浸した浸漬液を摂取した場合

もっと早く20分以内に出現するようです。


症状は消化器症状の悪心・嘔吐が多く、

摂取後2〜4時間経過しても、

元気で嘔吐・悪心なければ

中毒症状出現の可能性は低いと考えても

いいでしょう。


通常、紙巻きタバコを子どもが誤飲した場合、

苦みで吐き出したり、嘔吐によってタバコ葉が

吐き出されるので、重度の中毒症状が出現する事は

少ないようです。


ただ浸漬液の場合は速やかにニコチンが吸収される

ので注意が必要です。


最近は紙巻きタバコではなく、加熱式タバコが多く

なってきました。この場合はタバコ葉の形状のため

容易に摂取しやすくなっており、

また製品によっては薄い金属片が内包されている

ものもあり、消化管損傷の可能性もあるため

より注意が必要です。


もし医療機関を受診する場合は、

同一製品(パッケージも含む)を持参して下さい。



*この記事は粕屋町社会福祉協議会が毎月発行している

<かすやキッズネット>に連載中です


 

2023年8月18日金曜日

かすやキッズネット9月号

 今月(第173号)は『経口 抗コロナウイルス薬』です。

                             

8月に入りコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきました。


今回は小児に適応のある 経口 抗コロナウイルス薬 がテーマです。


現在日本で小児に適応がある経口薬 (飲み薬は以下の2剤です。


【ゾコーバ】

日本の製薬会社が開発した昨年11月に緊急承認された薬剤です。

12歳以上の方が対象です。他の薬剤は重症化リスクがある方への

投薬という制約がありますが、本剤にはそういう制約がありま

せん。重症化抑制効果は不明とされており、薬剤効果は発熱等の

症状を1日程度短縮するといわれています。

発症初期(3日以内)の投薬開始が必要です。併用禁忌・注意薬が

多く、妊娠の可能性がある女性・妊婦への投薬も禁忌です。


私個人は小児、特に重症化リスクの低いお子さんの場合は

投薬は慎重に判断すべきと考えています。


【パキロビット】

小児では12歳以上かつ体重40kg以上の重症化リスクのある方

対象です。重症化リスクとは慢性呼吸器疾患・難治性喘息・重篤な

心疾患・腎疾患・神経筋疾患・血液免疫疾患などです。

重症化予防効果はかなり高いようです。ただ併用禁忌・注意薬が

多く、腎機能障害がある方への投薬も慎重に行います。


上記内容は8月上旬の情報を元に記載しました