クリニックにはアレルギー検査(血液検査:特異的IgEの測定)を希望して受診される方が少なくありません。僕自身、典型的なアトピー素因を有した子どもであったので親御さんの気持ちもわかるのですが、アレルギーの全体像はまだ十分にはとらえられていないし、病態や症状の個人差は大きく、また同じ人でも条件によって症状の在り方が違うこともあるため、その診断は単純ではないと思っています。たしかに即時型の反応で原因物質が特定しやすいときには診断しやすいと思いますが、皮膚症状に代表されるような遅発・慢性の経過をとるものは、アレルギーは原因の一つであることが多いため、食物除去だけでは皮膚症状が改善しないことを経験します。(もちろん食物除去で改善するお子さんもいますが)
血液検査(特異的IgE値)の結果は診断のツールとして有用ではあるものの、実際の患者さんの症状・経過とつきあわせながら、日々のスキンケア・食事・生活を考えていくことが大事であろうと思います。
ただこれでは雲をつかむような話であり、もうちょっと踏み込んだ話を患者さんにしたいと思って少しずつ経口負荷試験を始めています。負荷試験の目的は確定診断と耐性獲得の診断(除去食解除のための負荷試験)の2つの目的があり、クリニックでは後者を目的に負荷試験をやっています。やってみると特異的IgE値が少々高くても症状が出ない人があれば、逆に同値が低くても症状が出る人もいるし、また同じ食物であっても食べる量・スピード・体調によって症状が異なる人もありました。
クリニックでは限られたお子さんの負荷検査しかできていませんが、年齢が高くなってくると特異的IgE値や皮膚テストの結果に関わらず食事制限を解除できるお子さんが増えるてくるという事を改めて感じています。
食物負荷試験はアナフィラキシーなどの重篤な反応を引き起こす可能性もあるので、適応は慎重に考えながら、少しずつ行っていこうと思っています。